「CAは安月給・退職金なし・いつでもリストラ」
…極端な情報に振り回されないために

この記事は、CA受験生のミスマッチを減らすために書きました。

SNSでは、注目を集めるために「関心を惹きやすい強い言葉」「断定的な表現」が使われがちです。
けれど、大切なあなた自身の人生やキャリアを他人の言葉では決めてはいけません。
ここでは、嘘や煽りを避けつつ、CAという仕事を現実的に理解できるように整理します。
先に結論としていえることは、CAの仕事には大変さもある一方、「一概に不幸」「安月給で詰む」と断定できるものではありません。

雇用形態・会社規模・路線（国内/国際）・手当・キャリアルートで、実態は大きく変わります
「額面の基本給」だけで判断すると、誤解が生まれやすい職種でもあります

なぜ、いまこの整理が必要なのか

CAは「憧れ」からスタートしやすい仕事です。
だからこそ、情報が偏ると入社後のギャップが大きくなり、本人にとって会社が居辛い場となってしまいます。

各社が面接に時間とお金をかけるのは、書類だけでは見えない相性・健康面・対人ストレス耐性・協働性などを確かめ、企業が求める人材とのミスマッチを減らしたいから。
面接は“落とすため”にしているのではなく、合う人を丁寧に選ぶためのプロセスでもあります。

SNSで見かける「極端な言い切り」— どこが誤解を生む？

例：「CAは安月給」「退職金なし」「不安定すぎ」「いつリストラされてもおかしくない」など

こうした投稿は、一部の経験（しかも条件が限定されるケース）を“全CAの真実”のように見せてしまうことがあります。

※情報の出どころについて（コンプライアンスの観点）
CAや航空業界に関する情報の中には、立場上公開できない内容（社内資料・運航や訓練の詳細・未公表のルール等）を含むものが出回ることがあります。
受験生の皆さんは、不確かな情報や過度に刺激的な投稿に振り回されないためにも、公式発表・公的統計・企業の採用情報など、信頼できる一次情報を中心に判断することをおすすめします。

※「非公開情報」を知っても、面接で有利になるとは限りません。
ときどき「公式に出ていない情報まで集めたら、面接で有利になりますか？」という相談を受けます。
一般論として、公式発表や確認できる範囲を超えた情報を持っていること自体が、合否を左右することはありません。

実際に、情報をくまなく集めた方でも落ちることはありますし、逆に「その会社のフライトを利用したことがある／ない」「機内でCAと話したことがある／ない」といった経験の有無を面接で問われた方で、受験中の航空会社の飛行機を利用したことがないことを正直に伝えた人でも合格しています。
つまり、情報量や、こういった経験の有無が、合否を決めるわけではありません。

面接で評価されるのは、知識量よりも“あなた自身の再現性”です。
具体的には、受け答えの一貫性、表情や声の印象、相手に合わせた反応、チームで働く姿勢、そして保安要員としての誠実さなど、入社後も同じように発揮できる力が見られています。

だからこそ、余計な情報探しに時間を使うより、面接対策（話し方・伝え方・エピソードの整理）や、英語力の積み上げに時間をあてた方が、結果につながりやすいと考えています。

まず確認したい3つの前提

雇用形態：正社員か、有期雇用（契約社員等）か
会社規模：大企業・中企業・小企業で賃金水準の平均が変わる
賃金の見え方：基本給だけでなく、手当・乗務関連の支給がある（会社・働き方による）

①「リストラされる」は本当？
ー正社員と有期雇用を分けて考えるー

ポイント：「リストラが怖い」は、主に有期雇用（契約期間満了→更新なし）の不安と混同されやすいです。

日本では、正社員を会社都合で簡単に解雇することは一般にハードルが高く、解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます（解雇権濫用の法理）。

※法令参考：e-Gov法令検索「労働契約法」（解雇権濫用の考え方を含む）
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128/

一方、契約社員などの有期雇用は、契約期間の満了でいったん区切りが来るため、更新の有無が不安定要因になり得ます。

“いつでもリストラ”と一括りにせず、まずは

自分が受ける会社の「雇用形態（正社員／有期）」
募集要項の「契約期間・更新の考え方」
過去の採用実績と、今後の事業方針

を確認するのが、現実的なリスク管理です。

②「安月給」は本当？
ー “比較の土俵”をそろえるー

「安い／高い」は価値観でも変わりますが、少なくとも判断を誤らないための土俵は整えられます。

（A）企業規模で見ると、賃金は平均的に差が出る

厚生労働省「賃金構造基本統計調査（令和6年）」の結果概要では、企業規模別の賃金が示されています。

年齢階級（男女計）	大企業	中企業	小企業
年齢計	364.5（千円）	323.1（千円）	299.3（千円）
20〜24歳	244.7（千円）	227.7（千円）	221.8（千円）
25〜29歳	284.8（千円）	258.7（千円）	258.2（千円）

※出典：厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査結果の概況（04 企業規模別）」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/dl/04.pdf
※企業規模の定義（例：大企業＝常用労働者1,000人以上等）は、同調査の定義に基づきます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html

（B）「基本給だけ」を見て判断しない（手当・出張旅費など）

CAは会社や働き方によって、基本給以外にさまざまな支給が乗ることが一般的です。

パーディアム：宿泊を伴う乗務で支給される出張旅費（海外に限らず国内でも支給されるケースがあります／会社によります）
早朝・深夜・長時間フライト等の手当：勤務形態に応じて支給（会社によります）
能力給・資格手当：語学力など（会社によります）
職種手当・昇格：勤続・評価により、職位や役割が上がれば上乗せされることがあります

ただし注意：入社前にこれらを細かく把握するのは難しいのが現実です。
だからこそ、「給与明細の内訳」まで含めて語れる立場の人の情報と、短い乗務歴の自己申告を同列に扱うのは危険です。
また、各航空会社のコンプライアンス違反となるような情報を現役CAが提供している場合もありますので、情報入手先は信頼のおける企業にとどめることをおすすめします。

ここが大事：「給与が安い／高い」の断定に振り回されると、視野が狭くなります。

CAという仕事は、収入だけでなく、働く環境・やりがい・得られる経験も含めて判断しないとミスマッチが起きやすい。これは事実です。

③「退職金なし」は本当？
ー法的には“義務ではない”が、会社ごとに制度があるー

退職金については、法律上、企業に一律の支給義務があるわけではありません。
一方で、多くの企業で何らかの形で用意されている例が多い、とされています。

※出典（参考資料）：厚生労働省資料「退職に伴って支払われる金銭について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000122770.pdf

また、退職金がある場合でも、勤続年数・規程・退職理由（自己都合／会社都合など）で受給条件が変わることが一般的です。
これらの条件は、勤務先の就業規則・退職金規程などで確認できる場合が多い一方、社外から正確に把握するのは難しいのが現実です。
さらに、仮に「以前その会社で働いていたCA」からの情報であっても、その方の勤続年数が退職金の支給条件を満たしていなかった可能性もあります。
そのため、個人の体験談だけで「退職金がない会社」と一概に言い切らないことが大切です。

▶ 後編では：「国内航空会社（CA採用実績のある会社）×企業規模の整理」「CAに向いている人チェックリスト（判定文つき）」「ミスマッチが起きる理由と面接の意味」をまとめます。

※後編はこちら：CAは安月給？リストラ？SNSの“CAのリアル”を事実で整理する（後編）｜向いている人チェックリスト＆面接の意味

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※このブログは、公式発表・公的統計・採用情報など確認できる情報を優先して整理しています。