共同運航便(コードシェア便)とは?元JAL国際線CAが乗務経験から解説|便名・機材・乗務員が違う仕組み
航空券を予約したときには「JAL便」「ANA便」と表示されていたのに、空港へ行ってみると、違う航空会社の飛行機が待っていた。
あるいは、搭乗してみたら客室乗務員も別の航空会社だった。
そんな経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
これは、航空業界では珍しいことではありません。
1つの航空便に複数の航空会社の便名を付けて販売する「共同運航便(コードシェア便)」という仕組みがあるからです。
私はJALの国際線客室乗務員として乗務していた時代に、社内公募で選ばれ、タイ国際航空やカナディアン航空が運航するJALとの共同運航便乗務を担当した経験があります。
また、期間限定でJTA(日本トランスオーシャン航空)の便にJALの客室乗務員として乗務したり、JAL塗装の機材をJALwaysの乗務員が担当する便に乗務したりと、現在振り返ってみると、「便名」「機材」「運航会社」「乗務員の所属」が必ずしもすべて同じではない、さまざまな運航形態を経験してきました。
この記事では、共同運航便とは何なのかを、元JAL国際線CAとしての乗務経験も交えながら、できるだけわかりやすく解説します。
共同運航便(コードシェア便)とは?
共同運航便とは、英語では「Code Share Flight(コードシェア便)」と呼ばれ、1つの航空便を複数の航空会社がそれぞれ自社の便名を付けて販売する仕組みです。
たとえば、A航空会社が実際に飛行機を運航している便に、提携しているB航空会社も自社の便名を付けて航空券を販売することがあります。
この場合、同じ飛行機に対して、
- A航空会社の便名
- B航空会社の便名
という2つ以上の便名が存在することになります。
つまり、航空券に書かれている航空会社と、実際に飛行機を運航している航空会社が同じとは限りません。
JALもANAも、公式サイトでは「コードシェア(共同運航)便」として案内しています。
スターアライアンスやワンワールドと共同運航便は何が違う?
共同運航便について調べていると、「スターアライアンス」や「ワンワールド」といった航空会社のグループとの違いが、少しわかりにくく感じるかもしれません。
結論からいうと、共同運航便(コードシェア)と、スターアライアンスやワンワールドなどの航空連合(アライアンス)は、別の仕組みです。
コードシェアは、特定の航空会社同士が提携し、1つの航空便に複数の便名を付けて販売する仕組みです。
一方、スターアライアンスやワンワールド、スカイチームなどは、複数の航空会社が加盟する世界規模の航空連合です。
アライアンスでは、コードシェアだけではなく、
- マイレージの相互利用
- 空港ラウンジの相互利用
- 乗り継ぎの利便性向上
- 上級会員向けサービスの相互提供
- 世界各地の航空ネットワークの連携
など、より幅広い分野で航空会社同士が協力しています。
日本の航空会社では、ANAがスターアライアンス、JALがワンワールドに加盟しています。
同じアライアンスでなくてもコードシェアはできる
ここで重要なのは、コードシェアをするために、同じアライアンスに加盟している必要はないということです。
たとえばANAはスターアライアンスに加盟していますが、スカイチームに加盟するベトナム航空ともコードシェアを行っています。
つまり、
ANA(スターアライアンス)
↓ コードシェア
ベトナム航空(スカイチーム)
というように、異なるアライアンスに所属している航空会社同士でも、個別に提携して共同運航便を設定することができます。
そのため、
- アライアンス=世界規模で複数の航空会社が参加する大きな提携グループ
- コードシェア=航空会社同士が個別に結ぶ、特定の便に関する運航・販売上の提携
と考えると、違いがわかりやすくなります。
同じアライアンスだからといって、すべての便が共同運航になるわけではない
逆に、同じアライアンスに加盟している航空会社同士であっても、すべての路線・すべての便がコードシェアになるわけではありません。
アライアンス加盟とコードシェア契約は別のものなので、どの路線で、どの航空会社と共同運航を行っているのかは、それぞれの航空会社の提携内容によって異なります。
航空会社を調べるときには、
「どのアライアンスに加盟しているか」だけでなく、「その会社が実際にどの航空会社とコードシェアをしているのか」まで見る
と、より深い企業研究につながります。
「JAL便なのにJALの飛行機ではない」が起こる理由
共同運航便を理解するときに大切なのが、「販売する航空会社」と「実際に運航する航空会社」を分けて考えることです。
たとえば、JALの便名「JL○○便」として航空券を購入したとしても、その便が他社との共同運航便であれば、実際には提携航空会社が運航していることがあります。
その場合、基本的には、
- 使用する航空機
- パイロット
- 客室乗務員
- 機内サービス
などは、実際に運航する航空会社側のものになります。
現在のJAL国内線でも、フジドリームエアラインズ(FDA)、天草エアライン(AMX)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)などとの共同運航便があります。
ANA国内線でも、AIRDO、IBEXエアラインズ、ソラシドエア、スターフライヤー、オリエンタルエアブリッジなど、複数の航空会社との共同運航が行われています。
ですから、航空券を見て「JLだからJAL」「NHだからANA」と便名だけで判断するのではなく、予約画面などに表示される「運航会社」を確認することが大切です。
共同運航便では機材やCA、サービスも変わる?
共同運航便では、原則として実際に運航する航空会社の機材と乗務員によって運航されます。
そのため、同じJAL便名、ANA便名で購入した航空券であっても、実際に搭乗してみると、座席や機内の雰囲気、客室乗務員の制服、機内サービスなどが通常のJAL便・ANA便とは違うことがあります。
チェックイン方法、事前座席指定、機内持ち込み手荷物、遅延・欠航時の対応などについても、運航会社側の規定が適用される項目があります。
旅行者として共同運航便を利用するときには、価格や出発時間だけではなく、「どの航空会社が実際に運航する便なのか」まで確認しておくと安心です。
社内公募で選ばれ、共同運航便乗務を担当
私自身、JALの国際線客室乗務員として乗務していた頃、共同運航便乗務を担当していました。
当時、私が担当した共同運航便乗務は、通常のフライトと同じように誰にでもアサインされるものではありませんでした。
JAL社内で公募が行われ、希望する客室乗務員が応募し、その中から選ばれたCAが担当していました。
応募する際には、担当を希望する提携航空会社を出すこともできました。
私が実際に担当したのは、
- タイ国際航空
- カナディアン航空
の共同運航便です。
他社のCAと実際に一緒に働けるということもあり、私にとってはとても楽しい乗務の一つでした。
共同運航便では「編成外乗務」
私が担当していた当時の共同運航便では、外資航空会社が運航する航空機に、JALのCAが1~2名、「編成外乗務」という形で同乗していました。
運航会社のCAが、その機材の正式な客室乗務員として乗務し、保安業務を担います。
JALのCAは、その航空機の正式な保安要員としての編成には入りませんでした。
これは、CAが単なるサービス要員ではなく、保安要員でもあるからです。
航空機が変われば、
- ドアの操作方法
- 非常口の位置
- 非常用装備品
- 緊急時の手順
なども変わります。
私が担当していた便では、JALで通常運航している機材とは異なる航空機だったため、JALのCAは正式な保安要員として編成に入るのではなく、編成外で乗務していました。
サービスでは運航会社のCAと一緒に働く
「編成外」と聞くと、JALのお客様だけを担当していたように感じるかもしれません。
でも、実際にはそうではありませんでした。
フライト前には運航会社のCAと一緒にサービスブリーフィングにも参加し、機内では運航会社のCAと一緒に機内サービスを担当していました。
もちろん、JAL便名で予約されたお客様だけではありません。
運航会社側の便名で搭乗されているお客様からリクエストをいただけば、同じようにサービスをします。
その便に搭乗されているすべてのお客様にサービスをしながら、JAL便として利用されるお客様にとっては、JALを感じていただける存在でもありました。
日本語アナウンスのために乗っていたわけではない
当時、タイ国際航空にもカナディアン航空にも、日本人の客室乗務員が乗務していました。
そのため、通常の日本語アナウンスは、その会社の日本人CAが行っていました。
JALのCAは、日本語対応のためだけに同乗していたわけではありません。
私たちは、JAL便としてご利用いただくお客様へのご案内を、日本語・英語で追加して行うことがありました。
JALの便名で航空券を購入されたお客様に、JAL便としての安心感やサービスを感じていただく。
それも、共同運航便にJALのCAが同乗する意味の一つだったと思います。
JALの制服を見て、ホッとされたお客様
他社の航空機の中に、JALの制服を着た私が立っている。
それだけで、ホッとしたような表情を見せてくださるお客様がいらっしゃいました。
その姿を見たとき、「自分がここにいる意味は、こういうことなんだな」と感じたことを、今でも覚えています。
航空会社のブランドは、機体の塗装やロゴだけでつくられるものではありません。
お客様と直接接するCAも、その航空会社を感じていただく大切な存在なのだと思います。
タイ国際航空で感じた、航空会社ごとの役割分担
私が共同運航便を担当していた当時、タイ国際航空のバンコク線でもJALとは異なるサービススタイルを経験しました。
私が乗務した便では、ギャレーを担当するのは男性CA。
女性CAは、機内サービスの際にタイシルクで仕立てられたタイドレスを着用していました。
役割分担がとても明確で、同じ航空会社の客室乗務員でも、それぞれの役割がはっきりしていたことが印象に残っています。
普段ならお客様としてしか見ることのできない他社のサービスに、客室乗務員として一緒に入る。
私にとって、共同運航便はそんな面白さのある仕事でもありました。
カナディアン航空で学んだ、多言語対応とコスト意識
カナディアン航空で特に印象に残っているのが、機内での多言語対応です。
私が乗務した便には、ネイティブレベルでフランス語を話せる客室乗務員が必ず乗務しており、機内アナウンスは英語・フランス語・日本語の3言語が定番でした。
カナダという国の背景を、実際のフライトの中でも感じることができました。
そして、もう一つ忘れられないのがクルーミールです。
乗務員用の食事として、カップ麺が搭載されていたこと。
当時JALで乗務していた私にとっては、「クルーミールにカップ麺があるの?」と、かなり衝撃的でした。
こうしたちょっとした違いまで新鮮で、他社のCAと働く楽しさを感じていました。
一方で、とても勉強になったのが、カナディアン航空のコスト意識でした。
サービス用品や飲料についても、必要以上に開封して余らせ、結果として廃棄することがないように気を配っていました。
もちろん、お客様へのサービスを減らすという意味ではありません。
必要なサービスをきちんと提供しながら、無駄な開封や廃棄を避ける。
その考え方は「見習うべきところだな」と感じ、その後JALの便に乗務するときにも意識するようになりました。
共同運航便は、他社のやり方を知り、良いところを自分の仕事へ持ち帰ることのできる貴重な機会でもあったと思います。
カナディアン航空は、その後エア・カナダへ統合
ちなみに、私が共同運航便乗務を担当していたカナディアン航空は、その後深刻な経営難に陥り、2000年にエア・カナダによる買収と債務再編が行われました。
その後エア・カナダへ統合され、2001年には「カナディアン航空」というブランドも姿を消しました。
自分が一緒にフライトをしていた航空会社が、今はもう存在しない。
そう考えると、航空業界の長い歴史の一場面に自分も乗務員として関わっていたのだと感じます。
実は「共同運航便」と「別会社が運航する便」は同じではない
ここは、CAを目指している方にはぜひ知っておいてほしいポイントです。
航空会社の便名と、機材や乗務員の所属会社が違うケースを、すべて「コードシェア」と考えてしまうのは正確ではありません。
航空会社間の連携には、共同運航以外にもさまざまな形があります。
現在のJALグループを見ても、JAL便名の便をJ-AIR、日本エアコミューター(JAC)、北海道エアシステム(HAC)などが運航しています。
これは、JALが他社便に自社のコードを付けて販売する一般的なコードシェアとは、仕組みが異なります。
ANAグループにも同様に、ANAブランドの国内線を数多く運航するANAウイングスがあります。
つまり、「ANA便=ANA本体のCA」「JAL便=JAL本体のCA」とは限らないということです。
私がJTA便に乗務したときは、JTAのエプロンを着用
私自身にも、共同運航便とは少し異なる興味深い乗務経験があります。
JAL在籍中、期間限定でJTA(日本トランスオーシャン航空)の便を担当したことがありました。
私はJAL所属の客室乗務員でしたが、JTAの機材・JTAの便に乗務し、機内サービスの際にはJTAのエプロンを着用していました。
所属会社はJALでも、その便でお客様が体験するのはJTAのサービスです。
振り返ってみると、エプロン一つにも、「その便でどのブランドをお客様に届けるのか」という考え方が表れていたのだと思います。
JAL塗装機でも、JALのCAが乗務するとは限らない
もう一つ、私が現役時代に経験したのが、JALの塗装をした機材をJALwaysの乗務員が担当する便です。
飛行機を外から見ればJAL。
便名もJAL。
けれども、実際に乗務する客室乗務員の所属会社は別会社というケースがありました。
こうした経験をしていると、航空会社を見るときに「機体に何と書いてあるか」だけでは、その便の運航体制を正確には理解できないことがよくわかります。
2029年度にはIBEXの乗務員が「ANA便」を運航する予定
そして今、国内航空でも新しい動きが始まろうとしています。
ANAとIBEXエアラインズは2026年7月、従来のコードシェアをさらに発展させ、2029年度を目途にIBEXがANA便の運航を担う新たな事業を開始することで合意しました。
ANAが路線・便数計画や販売を担当し、IBEXが運航会社として実際の運航を担当します。
そして、ANA便をIBEXの乗務員が運航する予定です。
これは従来のコードシェアとは異なり、「運航業務の管理の受委託」という仕組みに基づくものです。
この違いについては、別の記事で詳しく解説しています。
CA受験生は「便名」だけではなく「誰が運航しているか」を見よう
CAを目指している方にとって、この仕組みを知ることは単なる航空業界の知識ではありません。
企業研究そのものにつながります。
航空会社を調べるとき、就航地や機材だけを見て終わってしまう方は少なくありません。
でも、もう一歩踏み込んでみてください。
- その会社は、どの航空会社と共同運航をしているのか
- どの地域のネットワークを補完し合っているのか
- 自社ブランドの便を、誰が実際に運航しているのか
- 逆に、その会社が他社ブランドの運航を担っているケースはあるのか
- その提携によって、会社はどのような役割を担おうとしているのか
ここまで見ていくと、その航空会社が航空ネットワークの中で担っている役割が見えてきます。
航空業界の仕組みを、実際の現場でも見てみよう
企業研究で航空会社同士の関係や航空輸送の仕組みを知ったら、空港や航空会社の見学施設などへ実際に足を運んでみるのもおすすめです。
「面接で話すネタ」を探すためではなく、一便の飛行機を飛ばすために、どんな人たちがどのように関わっているのかを自分の目で見てみてください。
たとえばIBEXを企業研究する場合も、「ANAとコードシェアをしている会社」で終わるのではなく、今後はANAブランドの国内線ネットワークを実際の運航面から支える会社になるという視点が加わります。
共同運航便から見えてくる「航空会社のブランド」
共同運航便に乗務した経験から私が感じるのは、航空会社のブランドは、会社名や機体の塗装だけで決まるものではないということです。
お客様にとっては、予約した瞬間から旅が始まっています。
空港での案内、搭乗時の対応、機内でのサービス、客室乗務員の言葉や表情。
その一つひとつが、その航空会社への印象につながります。
私は他社の航空機の中でJALの制服を着て乗務し、JAL便としてご利用になるお客様が安心された表情を見たことで、CAそのものもブランドの一部なのだと実感しました。
一方で、サービスでは運航会社のCAと同じチームの一員として、その便にご搭乗いただいているすべてのお客様に接します。
他社と一緒に働きながら、自社のブランドも届ける。
共同運航便には、そんな独特の面白さがありました。
まとめ|「便名・機材・運航会社・乗務員」を分けて見ると航空業界がもっとわかる
共同運航便(コードシェア便)は、1つの航空便を複数の航空会社がそれぞれの便名で販売する仕組みです。
そのため、JAL便名・ANA便名で航空券を購入しても、実際には別の航空会社の機材・乗務員によって運航されることがあります。
一方で、J-AIRやANAウイングス、そして今後予定されているIBEXによるANA便の運航のように、便名と運航会社が異なっていても、それがコードシェアではないケースもあります。
航空業界を理解するときには、
- 便名
- 販売会社
- 運航会社
- 使用機材
- 乗務員の所属
- お客様が体験するブランド
を分けて考えてみると、航空会社同士の関係がずっとわかりやすくなります。
私自身、JALの客室乗務員としてタイ国際航空やカナディアン航空との共同運航便、JTA便、JALwaysの乗務便など、さまざまな運航形態を経験しました。
CAを目指す皆さんにも、「この航空会社はどこへ飛んでいるのか」だけではなく、「誰と組み、どのようにネットワークをつくり、どんな役割を担っている会社なのか」というところまで、ぜひ目を向けてほしいと思います。
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企業研究を「面接で話せる言葉」に変えたい方へ
企業研究は、航空会社の情報を暗記することが目的ではありません。
大切なのは、
- その会社のどこに魅力を感じたのか
- 他社との違いをどう捉えているのか
- なぜその会社でCAになりたいのか
- 自分の経験や強みを、どのように活かせるのか
を、自分自身の言葉で伝えられるようにすることです。
CA面接合格メソッドでは、元JAL国際線CAとしての乗務経験と、20年以上のCA面接指導経験をもとに、一人ひとりの経験や考えを整理し、その人だから話せる志望動機・自己PR・面接回答を一緒につくっています。
参考|公式情報
この記事の執筆・監修者
長尾 円
『CA面接合格メソッド』代表。JAL・ANAの両社から内定を得た経験をもとに、現在はCA受験生向けに面接対策・ES対策・コミュニケーション指導を行っています。
単なる受験テクニックではなく、「面接官視点でどう伝わるか」「評価されるポイントはどこか」を大切にしながら、新卒・既卒を問わず、一人ひとりの強みを言語化して「自分の言葉で話せる状態」に整えるサポートを行っています。
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